手術室の勉強会

自分の覚え書き。手術室で必要なアレコレと漫画をかくよ。

手術時の麻酔:伝達麻酔,神経ブロックの作用機序と局所麻酔中毒

伝達麻酔とはなんぞや

末梢神経ブロックとも呼ばれます。麻酔の一種です。

末梢神経の付近に局所麻酔薬を入れて部分的に痛みを感じなくさせる麻酔です。

作用機序と意義、局麻中毒について載せていきます。

ブロックの作用機序

局所麻酔薬は、神経の細胞膜を通過してナトリウムチャネルをブロックします。 神経線維(=神経軸索)における活動電位の伝導をブロックします。 局所麻酔薬には、エステル型とアミド型に分かれますが、神経ブロックに用いられる代表的な局所麻酔薬は、アミド型のメピバカインやリドカインが主です。

 

 

  1. ブロックの意義

ブロックは体性痛を強力に抑えることができます。オピオイドは急性期痛に対する強力な鎮痛薬でありますが、内臓痛と比べると体動時痛を抑えることが難しいです。オピオイドの増量をすることで嘔気,眠気,便秘,尿閉などの早期離床を妨げる症状が出ます。区域麻酔は低濃度の薬液で済むため、局所麻酔中毒に至る事態を回避することもできます。広義のバランス麻酔法として鎮痛と筋弛緩の重要な構成要素として組み込むことで幅広い麻酔法の選択が可能になっています。

 

  1. 抗凝固療法中に硬膜外麻酔や脊髄クモ膜下麻酔が使えない理由

 穿刺の際とカテーテル抜去時の脊髄硬膜外血腫が問題になります。症状は背部の局所的または根性の背部痛,叩打痛から始まりしばしば重症になります。脊髄圧迫が起こることもあり,腰部脊髄根の圧迫は馬尾症候群および下肢の不全麻痺を引き起こすこともあります。障害は数分から数時間にわたって進行していきます。

 

 4.局所麻酔中毒

局所麻酔中毒はNaチャネルブロックが全身に及びこれに伴って引き起こされる病態として存在します。大きく2つ分けて中枢神経毒性と心毒性があります。分類は即時型中毒・遅延型中毒があります。血中濃度が徐々に上昇することによって段階的に症状が出ますが、即時型中毒は、ブロック麻酔の血管内の誤投与によって引き起こされるもののため、症状の発現に段階がみられません。急な痙攣や循環抑制で発症する可能性があります。

局所麻酔の血中濃度が中毒濃度に達すれば必ず生じます。

 

  1. 局所麻酔中毒症状

中枢神経毒性は濃度依存性です。初期症状として舌・口唇のしびれ、めまいふらつき金属様の味覚、複視・耳鳴りがあり、次にHT等の興奮症状がおこり、強直性-間歇性の痙攣が引き起こされます。更に濃度の上昇が見られると、抑制症状がおこり昏睡・呼吸停止・血圧低下がみられます。

心毒性の症状はNaチャネルがブロックされ、次いでCaブロックがブロックされます。伝達遅延作用に伴って、心電図上PQ間隔の延長および、QRS波の増大が認められます。ブピパカインの心毒性は蘇生困難な心停止が引き起こされる可能性が指摘されています。

  1. 局所麻酔中毒時の対応

局所麻酔中毒が疑われた場合の治療は、まず酸素を投与します。

 高二酸化炭素血症は局所麻酔薬中毒時の痙攣の閾値を下げるため、低換気や呼吸停止の場合はすみやかにバッグマスクで換気をする。過換気にならないよう気を付ける。

 また、心毒性のあるブピパカインによる心停止に対して脂肪製剤の前投与が有効です。

 

  1. アナフィラキシーショック

 特異抗原の暴露から数分以内に出現します。まず咽頭浮腫や気管支痙攣による呼吸困難を生じ、短時間のうちに血管虚脱からショック状態に陥ります。掻痒や蕁麻疹、血管性浮腫のような皮膚症状、さらには悪心おう吐や激しい胃痛のような消化管症状を発現します。

 数十分から数時間後に二相性により強い症状を発現する場合があります。指の付け根や陰茎に局所麻酔する場合には血行障害により壊死をするためアドレナリンを添加した局所麻酔は使われません。