ハイリスク患者の術前・術中観察ポイント~糖尿病編
- 糖尿病患者
○術前情報ポイント
・血糖コントロールのために経口糖尿病薬やインスリンなどの薬剤を使用しているかを確認し使用している場合は、薬剤の種類や量を確認する。
⇒何を知るべき?
・ 経口糖尿病薬には短時間作用型と長時間作用型があり、作用に合わせた術前の旧約が必要である。また、インスリンに変更になることもある。
・ インスリンの種類は超速効型、速効型、中間型、持続型がある。
・ 周術期は体力維持や創傷治癒促進のため、積極的に糖質を投与し、必要に合わせてインスリン投与や血糖コントロールを行う。
⇒何ができる?すべき?
・ 血糖コントロールの方法を知り、薬剤に合わせた術前の準備(休薬,治療変更)ができているかを確認する。
・ 手術直前の医師の指示ができているかを病棟看護師と引き継ぐ。
・ 術中の血糖コントロールの目標は、血糖値150~200mg,尿糖(+)以下、尿ケトンが陰性である。
⇒何を知るべき?
・ 術前にHbA1cやGAを確認し、血糖コントロールの良否を確認する。
・ 術前は絶食による低血糖になる可能性がある。
・ 術中・後は麻酔・手術侵襲によりインスリン拮抗ホルモンの分泌やインスリン分泌能が低下し外科的糖尿病になる。
・ ケトアシドーシスを予防するため、術中は定期的に血糖、尿糖、尿ケトン体などをモニタリングし、必要に合わせて術中にインスリンを投与する。
⇒何ができる?すべき?
・ 術直前の血糖値を把握しておき術中の血糖値と比較評価する。手術が定刻に開始できない場合は絶食時間が延長するために病棟に情報を提供し、低血糖予防に努める。
・ 術中は血糖測定器や尿検査試験紙で測定できる準備をしておく。または、頻回の検査に合わせて、観血的動脈圧を測定する場合がある。
・ 術中の血糖コントロールは速効型インスリンで持続投与されるためシリンジポンプが必要となる。
・血圧、血清脂質検査、BMI、腹囲、喫煙など動脈硬化の危険因子を確認する。
⇒何を知るべき?
・ 慢性的な高血糖により、細小血管症、大血管症を合併している症例も多い。また深部静脈血栓症の発生する可能性がある。
⇒何ができる?すべき?
・ 血行障害のアセスメントを行い、術中は合併症の早期発見に努める。術前に四肢の末梢における皮膚色や足背動脈の血行などを確認する。深部静脈血栓症の予防対策方法を術者と検討する。
・ 術中は低体温を予防し、虚血性心疾患を誘発させない。
・末梢の神経障害や循環障害による皮膚の状態に異常がないか観察する。
⇒何を知るべき?
・ 皮膚は皮膚色が不良となり、乾燥・ひび割れが発生している場合が多い。進行すると潰瘍や壊疽を発症する。
・ 好中球機能低下や免疫機能の低下は感染の原因となる。また、創傷治癒が遷延する。循環障害により、褥瘡を形成しやすい。
⇒何ができる?すべき?
・ 術前から皮膚情愛を観察し、術中の皮膚障害についてアセスメントをする。状態に合わせて、皮膚を保護する。また、皮膚障害を悪化させる場合があるため、深部静脈血栓予防に弾性ストッキングの着用や間歇的空気圧迫法を検討しなければならない。
・ 口腔内を観察し、歯の状態や歯周病などがないか確認する。
⇒何を知るべき?
・ 慢性的な高血糖により好中球機能が低下し、歯周病菌の増殖を制御できない、血糖値変動により、歯周病は憎悪しやすい。
・ 歯周病菌は術後合併症である肺炎の起因菌となる。場合によっては歯科受診を検討する必要がある。
⇒何ができる?すべき?
・ 口腔内を観察し、口腔ケアの必要性を説明し、ADLが自立している患者にはケアを指導する。
・ 病棟看護師と連携をとり、口腔ケアを依頼する。動揺歯の有無を確認し、歯の脱落予防について医師と検討する
・術前に達成すべきグリコヘモグロビン(HbA1c)の目標値は7.5%以下であり、GAは18.5%以下である。ともに一定期間の血糖調節の指標となる。
・術前の血糖コントロールの目標は、空腹時血糖値100~140mg/dlもしくは食後血糖値160~200mg/dl以下尿中ケトン体陰性である。
・腎症,網膜症,神経症,虚血性心疾患などを合併しているケースが多い。
・動脈硬化による心疾患を合併している可能性があるため、異常波形を確認する。
・食事や運動療法について確認する。
・喫煙状況を知る。また現在禁煙ができているかを確認する。