手術前の絶飲食について 成人と小児
1) 絶飲食時間
成人の場合
午前0時よりNPO(nothing per os; 絶飲食)服薬を除く。
- 固形物:術前8時間前
- 透明水:2時間前(便宜上8時間前とする場合もある。)
小児の場合
固形物ミルク離乳食 透明水 |
||
6か月未満 |
4時間 |
2時間 |
6~36か月 |
6時間 |
2時間 |
36か月以上 |
6~8時間 |
2時間 |
絶飲食時間の目安
摂取物 |
絶飲食時間(時間) |
清澄水 |
2 |
母乳 |
4 |
人工乳・牛乳 |
6 |
固形物(軽食) |
6 |
固形物(脂質や肉類) |
8 |
8時間を経過してもフルストマックと考えて対処すべき患者として以下のものがある。
・緊急患者(特に外傷患者)
・意識障害があり、病歴食事などの状況がわからない場合
・腸閉塞、胃切除、後食道裂孔ヘルニアなど、消化管に異常がある患者
・腹腔内巨大腫瘍(卵巣腫瘍)
・大量の腹水
・妊婦
・重症糖尿病
・透析患者
術前輸液の指示午前中の手術では基本的に必要ないが、午後からの手術では術前輸液をしたほうが良い。絶飲食時間の不足分の水分を取るため、導入開始から1時間程度は絶飲食での水分の不足分として補正を行うが午後からだとそれでも足りないためか。成人では多くの場合500~1000mlの輸液を行う。ビカネイトの輸液の限度量は成人で10ml/h/kgのため50kgの患者に入れられる補液量は500ml/h、不感蒸泄、汗、便、尿で出ていく量は2.5ℓ*。単純に絶飲食時間である8時間で計算すると800ml程度の補正が必要となる。午後から入室の患者は更に絶飲食の時間が長引く可能性がある。そのため、病棟から水分補正を行ってくる。
*1厚生省,「健康のため水を飲もう」推進運動
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/topics/bukyoku/kenkou/suido/nomou/index.html
術前の欠乏量:4-2-1ルールでの計算(1時間当たりの維持輸液量)
体重10kgまで4ml/kg/h
10~20kg 2ml/kg/h
20kg異常 1ml/kg/h
・45kgの人ならば
10×4+10×2+25×1=85
8時間絶飲食ならば85×8=700mlの欠乏がある。
また、全身麻酔や局所麻酔は血管を拡張し、血管容量を増量させるため相対的な低血管容量状態になる。麻酔導入時の血管内液代償は5~7ml/kg程度が必要である。45kgの人ならば最低でも225mlは必要になる。絶飲食分と合わせて925ml必要。