手術前の継続薬・中止薬について
1) 手術での中止薬と継続薬について
Ⅰ中止薬
① 抗血栓薬
抗血栓薬の中止が難しい場合は半減期の短いヘパリンに変更し継続する。
ヘパリン療法は手術4~6時間前に中止しACT測定を行いながら手術に臨む。
□ブピラックス(硫酸クロピドグレル)
抗血小板作用(不可逆的),手術14日に前に中止
□パナルジン
抗血小板作用(不可逆的)手術7~10日前に中止
□ミニマックス,バファリン81mg,バイアスピリン,小児用バファリン
抗血小板作用(不可逆的)手術7~10日前に中止
□エパデール
抗血小板作用,手術7日前に中止
□ワーファリン
抗凝固作用手術4日前に中止
□プレタール
抗血小板作用(可逆的)手術2日前に中止
□ペルサンチン
抗血小板作用(可逆的)手術前日に中止(24時間前)
□プロサイリン,ドルナー,オパルモン,プロレナール,カタクロット,キサンボン,アンプラーグ,コメリアン,ロコルナール(24時間前)
② 経口糖尿病薬
□手術当日は中止。食事をしない場合には必要ない。投与すれば低血糖になる。
□半減期の長いクロルプロパマイドは手術当日に中止
③ 向精神薬
□三環系抗うつ薬
麻薬の作用増強、可能ならば2週間前に中止。(アミトリプチン,イミプラミン,デシプラミンなど)
□MAO阻害薬(サフラ)
交感神経刺激薬投与で高血圧、高体温、痙攣の可能性。2週間前に中止。
□炭酸リチウム
心筋抑制作用、筋弛緩増強、2週間前に中止。
□フェノシアジン誘導体
突然死の報告がある。QT延長(心電図異常)、電解質異常、肝機能障害に注意。
④ ジギタリス製剤
□心臓手術
48時間前に中止。実用ならほかの薬剤に変更。
□非心臓手術
できれば24時間前に中止。上室性頻拍の抑制に用いられている場合には手術当日前で継続。
⑤ サプリメント
□麻薬作用を増強するものがある。
種類によっては2週間前に中止(セント・ジョーンズワート,甘草,麻黄,イチョウ葉エキス,朝鮮ニンジンなど)
Ⅱ継続薬
① 降圧薬
□β遮断薬
急に中止するとリバウンドを起こすため継続(逆に麻酔時の低血圧、徐脈に注意)
□利尿薬
低カリウム血症に注意
□ACE阻害薬ARB
手術前日まで、当日は中止。(麻酔導入時の低血圧に注意)
② 抗不整脈薬
□基本的には継続。
ジギタリス製剤は不整脈抑制に用いられている場合には継続だが、ジギタリス血中濃度の測定を行っておく。
③ 冠血管拡張薬
□経口薬を貼付剤に変更することもある。
④ 気管支拡張薬
□状況によりテオフィリン濃度を測定しつつ継続、経口薬をほくなりンテープに変更することもあり。
⑤ 抗癲癇薬
□必要ならば薬剤血中濃度の測定、非脱分極性筋弛緩薬の作用時間短縮
⑥ 抗パーキンソン薬
□中止によりパーキンソン症状、嚥下障害、唾液分泌亢進、術後も早期に再開する必要がある。
⑦ 抗甲状腺薬
□術前の甲状腺機能をチェック
⑧ 補充療法
□インスリン
周術期は扱いやすい短時間作用性のインスリンに変更
□チラージン
継続(術前の甲状腺機能をチェック)