予防的抗菌薬の種類ー抗生剤の適応とその基準は
予防的抗菌薬は、手術部位感染の発症を阻止する目的で投与され、術後感染症が発症してからの治療目的で投与する抗菌薬とは区別します。手術創の清浄度によって狙いを定める細菌が異なり、選択する抗菌剤が異なります。
予防的抗菌薬が有効に働くには投与のタイミングが重要な因子となります。執刀するその時点で十分な殺菌作用を及ぼす血中及び組織中の濃度が必要です。もちろん術中もこの抗菌薬の濃度を維持することも大切で術中の再投与もされます(この時の濃度は組織の無菌化をするのではなく術中汚染に対する細菌量を宿主防御コントロールで制御できるレベル)。
予防抗菌薬の投与期間は術後感染菌の耐性化を予防するためにアメリカでは24hを超えないとされていますが、日本では術式の侵襲度やそれにともないドレーンの使用頻度なども異なるため日本に於いての適切な投与期間も異なります。
例のごとく出典は載せてません!調べて!
適応
予防抗菌薬はランダム化臨床試験(RCT)により非使用の場合と比較し有意に術後感染が低率となる手術において適応となります。しかし多くのクラスIでの手術では本来SSI発症率がきわめて低率であり、予防抗菌薬の有用性の証明は困難です。 RCT での証拠がない場合でも感染が起こると重篤な結果を招くような手術(ex:脳神経外科、心臓外科手術など)や術後感染リスクを持つ症例では予防抗菌薬の適応になります。手術創分類から見た適応として
クラスI:一部で抗菌薬の使用は不要
クラスII:予防抗菌薬の適応
クラスIII:術後感染リスク因子の存在を参考に予防抗菌薬もしくは治療抗菌薬の選択が 検討されます。リスク因子を認めない症例は予防抗菌薬の範疇とし、SSI高リスク症例では治療的に抗菌薬を使用し、選択や投与期間は予防投与と異なった考え方で行われます
クラスIV:予防でなく、治療的に抗菌薬が使用されます 。
基準
原則として手術部位の常在細菌叢に抗菌活性を有する薬剤選択が行われ、術後感染の原因細菌はターゲットにしません。手術操作が及ぶ部位から常在細菌以外の細菌が検出されている症例では、その細菌に活性を有する抗菌薬が選択されます。術前1カ月以内に抗菌薬使用歴のある症例では下の表で推奨されている抗生剤は適応になりません。
CEZ:セファゾリン
CTM:セフォチアム
CMZ:セフメタゾール
CTRX:セフトリアキソン
FMOX:フロモキセフ
SBT/ABPC:スルバクタム/アンピシリン
TAZ/PIPC:タゾバクタム/ピペラシリン
MNZ:メトロニダゾール
CLDM:クリンダマイシン
VCM:バンコマイシン
AZT:アズトレオナム
GM:ゲンタマイシン
LVFX: レボフロキサシン
GFLX:ガチフロキサシン
MFLX:モキシフロキサシン
FOM:ホスホマイシン
AMPC:アモキシシリン
AMPC/CVA:アモキシシリン/クラブラン酸