滅菌とは何か:基本編
無菌法は、イギリスのリスター(Lister,J.1827~1912)の業績に負うところが大きいです。リスターはなぜ手術創が感染するのか疑問を抱き、その解明を目指して研究していました。1861年に物の腐敗現象は微生物によることをパスツールが発表するとリスターはこの研究を支持し、感染も同様に微生物に起こると考え、1867年に石炭酸による防腐法を手術に適用しました。手術室や術野に石炭酸を噴霧し、石炭酸包帯で創部を覆い可能を防ぐことを可能にしたのです。このリスターの殺菌法は無菌法へと発展していきます。1886年、ベルクマンは術者の手や器械を完全に無菌にすれば創部の化膿を防ぐことができると考え、またこの弟子のシンメルブッシュは1889年に蒸気滅菌法を発表しています。このような殺菌・滅菌法によって手術に伴う感染リスクが激減していったのです。
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縫合針の種類:角針と丸針だけ覚えておけばいいってもんじゃない
縫合針には目的に合わせて様々な形があります。よく他のサイトでは角針と丸針の違いについて紹介されていますが、手術で使われる縫合針にそれだけの違いしか無いわけがありません。ここでは基本となる針の形についての説明や規格、見分け方について説明していきます。
角針と丸針
角針と丸針は針の先端の形が大きく異なります。角針は先端が上の図のように尖っており丸針は形が丸く円錐のように先端が尖ります。角針は皮膚のような固い組織を縫合したい場合に用い、丸針は腸管などの柔らかい組織の縫合に用いられます。
続きを読む手の外科:麻酔,ターニケットとは?
麻酔
手の外科で使う麻酔には主にキシロカイン(lidcaine),アナペイン(Rapivacaine)が使われます。この2つの薬は発現時間(薬が効き始める時間)と持続時間が異なり手術時間などと合わせて麻酔を使い分けていきます。
1) 発現時間と作用時間
発現時間(~5m),作用時間(1~2h)
2) 極量(Maximum dose:使用できる最大量のことです)
4.5mg/kg
⇒60kgで1%キシロカインを使用した場合…27ml
⇒40kgで1%キシロカインを使用した場合…18ml
それ以上で使用する場合はエピネフリン添加を使うなど。毛細血管の集まる手指には基本的に禁忌。
3) 副作用
重要なものとしてcardiac effects
心筋の自動能を抑制する。徐脈性不整脈に気を付ける。
続きを読む挿管チューブの種類とその適応
手術時の麻酔:伝達麻酔,神経ブロックの作用機序と局所麻酔中毒
伝達麻酔とはなんぞや
末梢神経ブロックとも呼ばれます。麻酔の一種です。
末梢神経の付近に局所麻酔薬を入れて部分的に痛みを感じなくさせる麻酔です。
作用機序と意義、局麻中毒について載せていきます。
- ブロックの作用機序
- ブロックの意義
- 抗凝固療法中に硬膜外麻酔や脊髄クモ膜下麻酔が使えない理由
- 4.局所麻酔中毒
- 局所麻酔中毒症状
- 局所麻酔中毒時の対応
- アナフィラキシーショック
ブロックの作用機序
局所麻酔薬は、神経の細胞膜を通過してナトリウムチャネルをブロックします。 神経線維(=神経軸索)における活動電位の伝導をブロックします。 局所麻酔薬には、エステル型とアミド型に分かれますが、神経ブロックに用いられる代表的な局所麻酔薬は、アミド型のメピバカインやリドカインが主です。
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小児の手術-室温や蛇管の大きさなどまとめ
小児での手術では、何をされるのか、何が起こるのかわからない不安、分離不安、自身の行動や意思の抑制がされるなど成人に増してストレスを抱えることが増えます。このストレスに対して小児には手術の承諾だけではなくプレパレーションという本人が手術への納得という形で手術を受け入れるための看護が行われます。これは小児に対して信頼関係を築くほか理解の程度や処置に対してどのような助けが必要かといったアセスメントが重要になります。
続きを読むラーラーラー言えるかな?抗生剤のなまえ~!
主に予防的抗菌薬で使われる抗生剤の名称と略称です
続きを読む予防的抗菌薬の種類ー抗生剤の適応とその基準は
予防的抗菌薬は、手術部位感染の発症を阻止する目的で投与され、術後感染症が発症してからの治療目的で投与する抗菌薬とは区別します。手術創の清浄度によって狙いを定める細菌が異なり、選択する抗菌剤が異なります。
予防的抗菌薬が有効に働くには投与のタイミングが重要な因子となります。執刀するその時点で十分な殺菌作用を及ぼす血中及び組織中の濃度が必要です。もちろん術中もこの抗菌薬の濃度を維持することも大切で術中の再投与もされます(この時の濃度は組織の無菌化をするのではなく術中汚染に対する細菌量を宿主防御コントロールで制御できるレベル)。
予防抗菌薬の投与期間は術後感染菌の耐性化を予防するためにアメリカでは24hを超えないとされていますが、日本では術式の侵襲度やそれにともないドレーンの使用頻度なども異なるため日本に於いての適切な投与期間も異なります。
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