手術室の勉強会

自分の覚え書き。手術室で必要なアレコレと漫画をかくよ。

手術時の麻酔:伝達麻酔・神経ブロックの種類

伝達麻酔・神経ブロックってなんぞやって思った人は下記のリンクへどうぞ

scrubnurse.hatenablog.com

 

ここでは伝達麻酔・神経ブロックの種類についていろいろ書いていきます。

参考にした文献がありますが、ソースは調べてね。

 

TAPブロック(Transversus Abdominis Plane Block;腹横筋膜面ブロック)
・内腹斜筋と腹横筋の間に薬液を注入することで、片側多分節の脊髄前枝をブロックし   ます。
・ブロック範囲はTh10~L1であるため、下腹部手術が適応です。
・画像は三層に分かれ、上から外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋になります。ブロック針は内腹斜筋と腹横筋の間をtofhy針で穿刺していきます。

禁忌:明らかに腹部に感染がある場合

 

 

閉鎖神経ブロック
・閉鎖神経は内転筋群の運動と大腿・膝関節内側・股関節の近くを支配しています。
・閉鎖神経ブロックは、神経刺激装置を併用することで比較的安全に行うことができます。
・閉鎖神経は腰神経叢の枝であり、第2~4腰神経の前肢に由来しています。
・泌尿器で使う場合は内視鏡下膀胱腫瘍切除術の場合、電気メスによって誘発される内転筋群の攣縮を予防します。

 

傍脊椎ブロック(paravertebral block)
・傍脊椎部の左右に存在する楔形上のスペースである傍脊椎腔に局所麻酔を投与することにより片側の脊髄神経と交感神経を遮断することを目的としています。
・傍脊椎腔は上下に連続しているため、局所麻酔が上下に広がっていきます。
・乳腺手術,VATS手術を中心に施行されることが多いです。
体幹の深部のブロックであるため、抗凝固療法中の患者での施行は慎重な対応が必要です。
・超音波ガイド法にはランドマーク法と同じ針の侵入経路で行われる交差法と平行法が使われます。
・硬膜外ブロックとの違いは片側のみの鎮痛を得られること、交感神経も片側のみのブロックとなるので血圧変動も硬膜外ブロックと比べ少ないこと、万が一血腫が生じたとしても、硬膜外腔のように骨に囲まれた空間ではないことから圧迫による重篤な神経障害を生じにくいです。

 

腕神経叢ブロック
・腕神経叢ブロックは方から手指まで、上肢手術の麻酔・鎮痛法として有効です。
・超音波ガイド下でのブロックは斜角筋間,鎖骨上,鎖骨下,腋窩アプローチの4つの方法があります。斜角筋アプローチは肩の手術,鎖骨上アプローチはそれ以外の上肢手術に有効です。
・鎖骨下・腋窩アプローチを鎖骨上アプローチに代えて積極的に選択する必要はありません。
・腕神経叢はC5~Th1の前肢に由来しています。
・斜角筋アプローチは尺側領域の手術には向きません。無理に薬液を増やすと斜角筋の前方を走行する横隔神経に作用が及び、片側の横隔神経麻痺を起こす可能性が高くなります。このため、呼吸予備能に余力がない患者さんには慎重に適応する必要があります。
・鎖骨上神経は上腕から手指に至る広い部位に有効な麻酔・鎮痛を得ることができますがその傍らには鎖骨下動脈や肺があるため注意が必要です。