手術室の勉強会

自分の覚え書き。手術室で必要なアレコレと漫画をかくよ。

滅菌物の扱い方について-保管編

滅菌とは

 まずは、滅菌という言葉について説明。

無菌とはすべての微生物(病原体・非病原体を問わず)が存在しないことであり、滅菌とは無菌性を達成する行為、すなわち全ての微生物を殺滅・または除去する行為です。

 

 しかし、滅菌処理により微生物は指数関数的に減少するため(下図)

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最終的にゼロ・無菌の状態にはなり得ません。

 図の意味が分からなかった人用に説明をすると、滅菌という行為で微生物が全くの0になるというわけではないということを理解していただければokです。

 なので、滅菌は確率的な観念として扱われる言葉であって、滅菌前の物品と比べて菌の数が100万分の1になった時初めて滅菌水準に達した、と定義されます。この滅菌水準のことを「無菌性保証水準(SAL:sterility assurance level)」と言います。

 

滅菌物の保管方法

 なので、滅菌物というのは完全に無菌の状態を指すわけではないのですがその状態を保つためには保管方法も大切になってきます。保管状況が悪ければ、不潔になってしまいます。

 

①埃の多いところ(電気製品周りなど)、湿気を帯びる可能性のある場所を避ける。

 不潔なところに置いておけばもちろん滅菌したものも不潔になります。湿気も滅菌性を破錠させる原因となります。袋の内側部分の滅菌が保たれていればいいと考えがちですが、不潔なものに接触した場合は内側の滅菌性も破錠していると考えてください。

 

②既滅菌物の保管に段ボールを使用しない

 段ボール、便利ですね!使い終わった後も箱としてリサイクルできる!ですが、残念ながら滅菌物を入れることには適していません。もちろん、医療施設において滅菌物ではなくとも他の物品を入れることは望ましくありません。何故ならその段ボールはいったいどのようにここに運ばれてきたのでしょうか?埃まみれの場所にあったのではないか?地面についたところにあったのではないか?どのような経路をたどってここに来たものなのかわからないものを使ってはいけません。もちろん監査によってはひっかかります。

 

③既滅菌物を使用する前に、CI(科学的インジケーター)の変色や包装の異常の有無(汚れや破損など)、使用期限を確認する

 包装に異常があったら、これは滅菌後であっても滅菌性が保証できないので使ってはなりません。CIとは滅菌条件が達成されたか否かを科学的に確認するためのものです。

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 施設によって違いますが、これがCIと呼ばれるものです。左が滅菌前のもの右が滅菌後のもの。左の紫色の丸が緑色に変わっていますね。滅菌物を使う前にはこの印を確認してから使いましょう。

 

④既滅菌物の包装を破損しないようにゆとりをもって保管する(重ねたり、折り曲げたりしない)

 滅菌物の包装は破れたり、汚れたりしたらそこで滅菌性は失われてしまいます。もちろん、保管の時にあまりにもぎゅうぎゅうと詰めたり棚に入りきらないからって折り曲げたり、輪ゴムでとめたりしたら破損の原因になります。

 

⑤既滅菌物を取り扱う際は、手指衛生を行い、十分乾燥させる

 手術室や処置で滅菌物を頼まれたらなるべく急いで出しますよね?ですが手は手指衛生していなければ不潔な状態です。不潔な状態で触ればもちろん滅菌性は破錠します。